2012年01月23日

歯医者記 -人はいかにして歯医者に通うか-2

朝の9時半。職場の近くにある歯医者が開院するのと同時に僕は受付に向かった。

「歯が痛いんです」問診表を書き終えると僕は受付の歯科衛生士に訴えた。
しかし彼女は僕の半日分の思いの詰まった訴えを聞き流し、じゃあレントゲン撮りますね〜と言った。さすがプロは慣れたものである。

妙に尖っていて口の中で収まりの悪いプラスチックの器具をくわえ、レントゲンを撮る。
いつも思うのだが、患者に鉛のベストを着せると看護婦や歯科衛生士がそそくさと部屋から立ち去るのはいかがなものだろうか。
いや確かに低量とは言え被爆は防いだほうがいいんだけど、取り残される方の気にもなってほしい。

痛む歯を抱えつつレントゲンを撮り終え、ようやく診察となる。
患者の恐怖心を最大限にあおりたてるために造られたのような例の「診察台」に横になる。

そして登場したのが僕のこの苦痛を魔法のように取り去ってくれる(はずの)歯医者の先生である。

 

「えーっとねぇ、膿んでますねぇ」

それが僕を一両日に渡り苦しめた痛みの正体だった。

先生の説明では、昔右下の歯を治療した際に歯医者が薬を奥まで入れなかったらしく、今になってそこが膿んだ。
しかも上から銀冠を被せているために膿の逃げ場がなく、結果歯及び歯茎の中の圧力が高まり痛くなったという事らしい。

「じゃあ膿取りますねぇ」先生は一通り説明すると、数知れぬ子供たちを恐怖のどん底に突き落としてきた悪魔の兵器「キュウィーーンって回るあいつ」でもって、文字通りキュウィーーンとやり始めた。

キュウィーーンがしばし続き銀冠が外されると(この辺は自分では見えないので想像)、先生は耳かきの先が硬い針金状になったような器具を取り出し、先に脱脂綿をくるくると巻き付けた。

何となくすごく嫌な予感がする。そんな尖ったものを口の中に入れるのはすごく危険な気がする。
そもそもまだ麻酔もしていないのだ。

 

しかし先生は全く躊躇する事なく、僕の悪い想像通りに針金を銀冠の取れた歯の中に突っ込み、ぐりぐりと掻き回した。

突然の激痛と声にならない悶絶…となるはずだが、それはなかった。
膿を抑えていた銀冠が取れ膿を抜いているので、むしろ痛みは緩和されている。

「あー、溜まってますねぇ」と言いながら先生は血と膿で汚れた脱脂綿を取り換えてはぐりぐりを繰り返す。
かなりぐりぐりしているのは口中に伝わる感覚からわかるものの、別に痛みはない。なにか狐につままれた気分だ。

しかしなんて事はない。よく考えたら以前の治療の際に神経を抜いたのだった。

ひとしきり痛みのないぐりぐりを繰り返しようやく膿が取れたのか、先生は注射器で歯の中に薬を注入し、白いセメントで蓋をした。

 

「ひとまず膿は取りましたから、また来て下さい。何回か繰り返して綺麗にしましょう」

溜まっていた膿を取り、圧力が下がったためようやく痛みは消えた。歯医者様様である。

感謝のあまり思わず拝みそうになった所で先生が話を進めた。
「ただあなたの場合、違う問題があるんですよね。親知らずが

これが降って湧いた思いがけない地獄の始まりだった。

posted by やどかり at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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