2012年01月18日

歯医者記 -人はいかにして歯医者に通うか-1

「…歯が痛い」  

僕がある日我慢出来ない程ではないが、かと言って無視出来るレベルではない痛みを口中の右下に感じたのは、まだまだ夏の暑さの残る九月のある日の事だった。

 我慢出来ない訳ではない。しかし痛みが気になって何一つ手につかない。
その日はたまたま休みだったので、僕は全く集中力の欠けた状態のままのろのろと家事をこなし、夕食の準備をした。

 

しかしそのうちに歯の痛みは「無視出来ないレベル」から「我慢出来ないレベル」まで徐々にランクアップを果たしてきた。
最初のうちは現実から目を背ける事で状況をごまかしていたが、さすがに限界を向かえつつある。
なので僕は対抗策を打ち出した。

薬の投与である。

僕は二十数年の人生で薬と名の付くものは風邪薬くらいしか飲んで来なかったのだが、妻が頭痛持ちの生粋のバファリニストの為、現在我が家にはバファリンが常備されている。
(ちなみにバファリニストとは、あらゆる病をバファリンによって治そうとする狂信的人物の総称である

大人なので雄々しくバファリンを二錠飲み下し、薬が効くまでの30分間を素知らぬふりでやり過ごす。

 そして30分後。
歯の痛みは「我慢出来ないレベル」から「まあ痛いかなレベル」にまで戦線を縮小した。こちらの勝利だ。
僕の意識の最前線から撤退していった歯の痛みを厳しく監視しつつ、僕は有意義に残りの休日を過ごした。

 

 しかし、奴らの撤退はあくまで戦略的、一時的なものだったのである。

夕食後、歯の痛みは再度攻撃を仕掛けてきた。
今度は昼間の攻撃に比べ本腰の入った攻撃で、テレビを見ていても本を読んでいても僕の意識の過半を支配してくる。痛い。ただひたすら右下の歯がズキズキジンジンと痛い。イタイ。
完全に痛みに蹂躙された僕の意識は、ようやく明日こそ歯医者に行こうと決意していた。

このままではどう考えても眠れないので、寝る30分前に本日2度目のバファリンを投与した。

バファリンは使用説明書によると一日2回までの投与制限がある。
それを越えると何がどうなってしまうのかは書いてないが、ただでさえ薬なんて滅多に飲まないのだからここは大人しく説明書に従う事にする。
つまり現在2回目の投与した以上、次の投与は翌日の朝以降までは空けるべきなのだ。

 夜という人が一番リラックスするべき時間帯、僕はバファリンの効力をただただ信じて奴らの攻撃を忍ぶしかない。
どこまでいけるかは全く自信がないが、とにかくこの一晩が勝負なのだ。
今晩さえしのげれば明日には朝一番で歯医者に行ける。やれば出来る。そう信じて僕は床についた。

 

 

明け方。僕は歯の痛みに耐え兼ねて布団の上で呆然と時が過ぎるのを待っていた。

 

〜続く〜

posted by やどかり at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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